食事で身長は伸びる?
“サプリ神話”を小児内分泌専門医が整理します(こどもの身長豆知識 vol.5)
お子さんの身長が気になると、 「牛乳をたくさん飲ませた方がいいですか?」 「身長が伸びるサプリは効果がありますか?」 「プロテインやカルシウムを飲ませれば背が伸びますか?」 と心配になる保護者の方は少なくありません。
結論からお伝えすると、食事は子どもの成長にとても大切です。 ただし、特定の食品やサプリだけで、身長がぐんぐん伸びるわけではありません。
身長は、遺伝、栄養、睡眠、運動、ホルモン、思春期のタイミング、病気の有無など、 さまざまな要素が関係して決まっていきます。
まず大切なのは「身長を伸ばす魔法の栄養」はない、ということ
子どもの成長には、たんぱく質、カルシウム、ビタミンD、鉄、亜鉛など、 いろいろな栄養素が必要です。
ただし、これは 「この栄養素をたくさん摂れば、平均以上に背が伸びる」 という意味ではありません。
栄養不足があるお子さんでは、食事を整えることで成長が改善する可能性があります。 一方で、すでに必要な栄養が取れているお子さんに、さらにサプリを追加しても、 身長が大きく伸びるとは限りません。
「カルシウムを摂れば背が伸びる」は本当?
カルシウムは、骨の健康にとても大切な栄養素です。 しかし、カルシウムだけで身長が伸びるわけではありません。
骨が伸びるためには、カルシウムだけでなく、たんぱく質、ビタミンD、 十分なエネルギー、ホルモンの働きなどが必要です。
たとえるなら、身長を伸ばすための成長は「家づくり」に似ています。
カルシウムは骨の材料の一部です。 でも、材料だけがたくさんあっても、大工さんの働きや設計図、 工事のタイミングが整っていなければ、家はうまく建ちません。
子どもの成長でも同じで、 カルシウムだけを増やすより、毎日の食事全体のバランスが大切 です。
身長のために意識したい食事のポイント
1. 主食をきちんと食べているか
ごはん、パン、麺類などの主食は、活動や成長に必要なエネルギー源です。
「おかずは食べるけれど、ごはんをあまり食べない」 「朝食を抜くことが多い」 「お菓子やジュースでお腹がいっぱいになってしまう」 という場合、成長に必要なエネルギーが不足していることがあります。
2. たんぱく質が毎食入っているか
たんぱく質は、筋肉や骨、血液、ホルモンなど、体をつくるために必要な栄養素です。
毎食、次のような食品のうち、どれか1つでも入っているかを確認してみましょう。
- 肉
- 魚
- 卵
- 大豆製品
- 牛乳・乳製品
「朝はパンだけ」「昼は麺だけ」になりやすいお子さんは、 卵、ヨーグルト、チーズ、納豆、豆腐、魚、肉などを少し足せるとよいでしょう。
3. カルシウムとビタミンDを意識する
カルシウムは骨の健康に大切です。 ビタミンDは、カルシウムの吸収や骨の代謝に関わります。
カルシウムを含む食品には、牛乳、ヨーグルト、チーズ、小魚、豆腐、小松菜などがあります。 ビタミンDは、魚、卵、きのこ類などに含まれます。
ただし、「たくさん摂れば摂るほどよい」わけではありません。 サプリメントなどによる過剰摂取には注意が必要です。
4. 偏食・少食・体重増加不良がないか
身長だけでなく、体重の増え方も大切です。
身長が伸びにくいお子さんの中には、次のようなケースがあります。
- 食が細い
- 好き嫌いが多い
- 朝食を食べない
- 体重がなかなか増えない
- 運動量に対して食事量が少ない
このような場合は、まず食事量や生活リズムを整えることが大切です。 ただし、食事を頑張っても身長の伸びが改善しない場合には、 栄養だけでなく、ホルモンや体質、思春期の進み方、病気の有無を確認する必要があります。
身長サプリは飲ませた方がよいですか?
保護者の方からよく聞かれるのが、 「身長が伸びるサプリを飲ませた方がよいですか?」 というご相談です。
小児内分泌の立場からは、基本的に次のように考えます。
しかし、「飲めば身長が伸びる」と期待して使うものではありません。
カルシウム、鉄、ビタミンD、亜鉛などは、不足によって成長が妨げられている場合には、 補うことで改善する可能性があります。
しかし、すでに栄養が足りているお子さんに追加すれば、 さらに身長が伸びる、という単純なものではありません。
「食品だから安全」「天然だから安心」とは限りません
サプリメントは薬ではなく食品に分類されることが多いため、 なんとなく安全なイメージがあります。
しかし、子どもに使う場合は注意が必要です。 「食品だから」「天然・自然だから」という理由だけで安全とは言えません。 成分によっては過剰摂取になることもあります。
特に、お子さんにサプリメントを長期間使う場合や、 複数のサプリメントを組み合わせる場合には注意が必要です。
身長が気になる場合は、サプリを始める前に、 まず成長曲線で本当に伸び方に問題がないかを確認することが大切です。
受診を考えた方がよい身長のサイン
食事を整えることは大切ですが、低身長の原因が食事だけとは限りません。 次のような場合は、一度ご相談ください。
- 成長曲線で −2SD を下回っている
- 以前は平均に近かったのに、だんだん曲線から下がってきた
- 1年間の身長の伸びが明らかに少ない
- 体重もあまり増えていない
- 思春期が早く始まっているように見える
- 女の子で胸のふくらみが早い
- 男の子で急に体つきが変わってきた
- ご家族が「何となく伸びが悪い」と感じている
低身長は、単に「背が低い」というだけではなく、 成長ホルモン、甲状腺ホルモン、思春期の進み方、慢性的な病気、 栄養状態などが関係していることがあります。
当院でできること
つくばキッズクリニックでは、小児内分泌専門医が、 低身長や思春期早発症などのご相談をお受けしています。
低身長の診療では、単に現在の身長をみるだけではありません。
- 成長曲線の確認
- これまでの身長・体重の伸び
- ご両親の身長
- 出生時の身長・体重
- 食事量や生活リズム
- 思春期の進み具合
- 骨年齢
- 必要に応じた血液検査
これらを総合的に確認し、 「食事の問題なのか」 「体質として小柄なのか」 「ホルモンや思春期の影響があるのか」 「治療が必要な低身長が隠れていないか」 を丁寧にみていきます。
まとめ
身長のために食事はとても大切です。 しかし、特定の食品やサプリだけで身長が伸びるわけではありません。
大切なのは、次のような毎日の積み重ねです。
- 主食・主菜・副菜をそろえる
- たんぱく質を毎食意識する
- カルシウムやビタミンDを食品から無理なく摂る
- 朝食を抜かない
- 睡眠と生活リズムを整える
- 成長曲線で身長の伸びを確認する
食事を整えても身長の伸びが気になる場合や、 成長曲線から外れてきている場合は、 早めに小児内分泌の専門外来で確認することをおすすめします。
お子さんの身長は、今だけでなく、将来の成長にも関わる大切なサインです。 「サプリを始める前に」、まずは成長曲線で本当に伸び方に問題がないかを確認してみましょう。