
ご家庭でのスキンケアを見直すための基本の目安
アトピー性皮膚炎のお子様の保湿ケアは、ぬるめのお湯でやさしく洗ったあと、肌がしっとりしているうちにたっぷりの量を、朝とお風呂のあとの1日2回塗ることが基本とされています。毎日のいそがしさのなかで「塗るのが遅れてしまった」「今の量で足りているのか分からない」と悩む保護者さまへ、お風呂での手順や、指先ではかる量の目安(FTU)、塗り広げ方のコツをまとめました。また、保湿剤と治療薬の役割のちがいや、夜のかゆみ・かき壊しが続くときに小児科へ相談する目安もお伝えします。
この記事の要点まとめ
- ぬるめのお湯でやさしく洗い、入浴後は肌が乾く前に保湿します。朝と入浴後の1日2回が目安です。
- 1FTUを量の目安にし、肌がしっとりする程度まで、すり込まずに優しく塗り広げます。
- 保湿剤は乾燥を防ぎ、治療薬は炎症を抑える役割です。赤みや夜間のかゆみが続く場合は小児科へ相談します。
- アトピーの子供の入浴から保湿までの手順と、塗るタイミング・回数の目安
- 保湿剤を塗る量はFTUで決める|子供の年齢・部位別の目安と塗り広げ方
- 保湿剤と治療薬の役割の違いと、かゆみや掻き壊しが続くときに小児科へ相談する目安
- よくあるご質問
- 参考文献
- 監修
アトピーの子供の入浴から保湿までの手順と、塗るタイミング・回数の目安

塗るケアのなかで、毎日のお風呂と保湿は、肌のバリアのはたらきを支える土台とされています。ここでは、洗い方から保湿剤を塗るまでの流れと、塗るのが遅れてしまった日の対応、1日の回数の考え方をまとめます。なお、回数などの数字はおおよその目安で、お子様の肌のようすや医師の指示によってかわります。
湯温はぬるめに、洗浄料は泡で手洗いしてしっかりすすぐ
お湯の温度は季節に合わせて熱すぎないぬるめにし、湯船につかる時間と体を洗う時間を合わせて、長くなりすぎないようにします。熱いお湯や長いお風呂は、肌のうるおいをうばい、上がったあとのかゆみや乾燥を強めることがあります。
体を洗う際は、石けんや洗浄料をしっかりと泡立て、タオルやスポンジを使わずに保護者の手でなでるように優しく洗います。首のまわりや肘の内側、膝の裏など、汗や汚れがたまりやすいしわの部分は、指の腹でしわを広げて泡を残さないよう丁寧にすすいでください。洗浄料の使用は1日1回を基本とし、日中たくさん汗をかいてシャワーを浴びる際は、お湯だけで流す方法も取り入れられます。
入浴後は肌の水分が残るうちに塗り始めるのが目安
お風呂上がりは、肌の表面から水分が急速に蒸発していくため、タオルで水気を拭き取ったら早めに保湿剤を塗り始めることが勧められています。水滴を拭くときは、タオルでゴシゴシこすらず、肌に優しく押し当てるようにして水分を吸い取ります。
塗るタイミングとして「入浴後15分以内」を挙げる情報も多く見られますが、時計を見て焦る必要はございません。時間を過度に気にするよりも、「浴室を出て体を拭いたら、パジャマを着る前にまず保湿剤を塗る」というように、ご家庭の脱衣所での手順に組み込んでしまう方が無理なく続けやすくなります。
下の子の世話ですぐ塗れなかった日はどうする?遅れたときの対応
ごきょうだいの着替えや授乳を優先して、上のお子様への保湿が遅れてしまう日もあるかと思います。時間が経ってしまっても、その日の保湿をやめずに塗ることに意味がありますので、気づいたタイミングでケアを行ってください。
すでに肌が乾いていると感じる場合は、ぬれた柔らかいタオルや手で軽く肌を湿らせてから保湿剤を塗ると、なじみやすくなります。全身を一度に塗るのが難しいときは、乾燥やかゆみが出やすい膝の裏や肘、首まわりから先に塗っておくのも一つの工夫です。
あらかじめ脱衣所の手が届く場所に、ポンプ式や蓋を開けやすい保湿剤を置いておくのも一案です。上のお子様を先に拭いて、自分の手で塗れる部分だけ塗ってもらうのもよいでしょう。完璧を目指さず、ご自身を責めずに続けられる段取りを見つけていただければと思います。
保湿は1日何回?朝と入浴後の2回を基本に肌の状態で調整
家庭での保湿ケアは、朝と入浴後の1日2回を基本とし、空気が乾燥する季節やカサつきが強い部位には日中も含めて1日3回以上に増やす考え方があります。日中に汗や衣服の擦れで保湿剤が落ちてしまうため、朝の着替え時にも塗っておくことで日中の肌を保護しやすくなります。
登園前の慌ただしい朝は、パジャマを脱がせるついでに伸びのよいローションやクリームを使うと、短時間で済ませることが可能です。また、赤みやかゆみが落ち着いている時期であっても毎日の保湿を続けることが、皮膚の状態を保つうえで役立ちます。具体的な回数は肌の状態や処方内容によって異なるため、受診時に医師へご確認ください。
ポイント
入浴はぬるめのお湯と泡の手洗いを基本とし、入浴後は着替えの前に保湿する流れを作ることが、忙しい毎日でもケアを続ける助けになります。
保湿剤を塗る量はFTUで決める|子供の年齢・部位別の目安と塗り広げ方

毎日欠かさず塗っていても、使用量が足りていないために乾燥が続いてしまうケースは珍しくありません。ここでは、ご夫婦やご家族の誰が担当しても同じ量を塗れるようにするための基準(FTU)と、お子様の部位別の目安量、肌への負担を減らす塗り広げ方を解説いたします。なお、適切な量は製品の種類や処方内容によって変わるため、医師や薬剤師に確認することを前提としてください。
FTUとは?大人の人差し指の先から第一関節までが手のひら2枚分の目安
塗り薬や保湿剤の量を表す単位として、FTU(フィンガーチップユニット)という目安が使われます。チューブから大人の人差し指の先から第一関節までしぼり出した量が「1FTU」で、大人の手のひら2枚分の広さに塗る量にあたります。
瓶やポンプの容器に入った軟膏・クリームやローションは指にしぼり出せないため、チューブの1FTUと見くらべて、指先や手のひらにとる量を覚えておくとよいでしょう。このFTUをご夫婦で「共通の物差し」として共有しておくと、平日に塗る人と休日に塗る人で使用量がばらつくのを防ぎやすくなります。
4歳前後の子供で全身・部位ごとに必要な量の目安
全身に湿疹があるときは、1歳前後のお子様でも1回に5gのチューブ1本ほど、大人では20gほどの量が必要になるとされています1。4歳前後のお子様は1歳のころよりからだが大きいため、これより多めになると考えてください。からだの場所ごとに必要な量は、顔・首は少なめで、腕、脚、胸・お腹、背中・おしりと、広い場所ほど多くなります。
部位ごとの量はおおよその目安で、お子様の背の高さや体つき、乾燥の強さによって変える必要があります。ご家庭で塗る量が足りているかを確かめるときは、「もらった、または買った容器1本(または1個)が何日でなくなるか」から考えてみるとつかみやすくなります。
「少量を薄く広く」は足りていない?塗る量と塗り方のよくある誤解
べたつきを気にして少量を薄く引き伸ばすように塗ると、皮膚の表面を十分に覆うことができず、保湿の働きが発揮されにくくなります。塗った直後の肌がしっとり光り、ティッシュペーパーを1枚乗せると軽く貼りつく程度が、十分な量を塗れている目安です。
塗るときは、手のひらにまとめて広げるのではなく、まず塗りたい部位の数か所に保湿剤をポンポンと点置きします。そのあと、指先で強くすり込むのではなく、手のひら全体を使って皮膚のしわの向き(横方向)に沿って優しくなでるように広げてください。関節の曲げ伸ばしが多い膝の裏や肘の内側、耳の付け根、足首などは塗り残しが起こりやすいため、最後にひと塗り足す意識を持つと丁寧なケアにつながります。
ワセリン・クリーム・ローションの違いと、部位や季節に合わせた選び方
保湿剤には主に軟膏(ワセリンなど)、クリーム、ローション(乳液・化粧水タイプ)の3つの剤形があり、それぞれ特徴が異なります2。白色ワセリンなどの軟膏は、肌の表面に油分の膜を作って水分の蒸発を防ぐ働きがあり、べたつきやすい一方で肌への刺激が少ないのが特徴です。クリームは油分と水分が混ざっており肌になじみやすく、ローションはさっぱりとしていて広い範囲や毛のある部位に塗り広げやすい性質があります。
カサつきが強い部位や乾燥する冬場は軟膏やクリームを選び、汗をかきやすい夏場や頭皮、日中の塗り直しにはローションを使うなど、季節や部位によって使い分ける方法があります。なお、市販の保湿剤をドラッグストア等で購入する場合、1本あたり500〜2,000円程度が一般的な相場ですが、これは一般的な相場であり当院の費用ではありません。実際の費用は製品や医療機関により異なります。また、ワセリンは乾燥を防ぐ補助にはなりますが、湿疹の炎症そのものを抑える働きはありません2。お子様に合う保湿剤の種類は肌の状態によって異なるため、医師にご相談ください。
ポイント
大人の指先から第一関節までの量(1FTU)を基準にし、すり込まずに「ティッシュが軽く貼りつく程度」まで優しく塗り広げることが基本です。
保湿剤と治療薬の役割の違いと、かゆみや掻き壊しが続くときに小児科へ相談する目安
アトピー性皮膚炎は、乾燥と炎症、強いかゆみが良くなったり悪くなったりを繰り返す、長く続く皮膚の病気です。家庭での保湿ケアだけで様子を見てよいのか、治療薬を使うべきか迷ったときのために、両者の役割の違いと受診の目安を整理いたします。
保湿剤は肌のバリアを補い、治療薬は炎症を抑えるという役割の違い
保湿剤は、角質層の水分を保って皮膚のバリア機能を補う「日々の土台」となるケアです2。一方で、赤みやブツブツ、強いかゆみのある湿疹は炎症が起きている状態で、保湿剤だけではおさまらないため、ステロイド外用薬などの炎症をおさえる薬(治療薬)でしっかり治していきます。
炎症をおさえる外用薬は、効果と副作用の両面から多くの研究が行われています。ステロイド外用薬は、なんとなく使い続けると皮膚に副作用が出ることがあり、効き目の強さでいくつかの段階に分けられています。強い薬ほど副作用も出やすいため、必要以上に強い薬は使わず、湿疹の重さに合った強さの薬を選ぶことが大切です3。
「薬を長く使って大丈夫なのか」とご家族の間で不安があるときは、自己判断で塗るのをやめたり量を減らしたりせず、薬を減らしていく手順も含めて診察時にご相談ください。
夫婦や保育園で手順をそろえるために、処方時に確認しておきたいこと
ご家族の誰がケアを担当しても同じ手順で行えるよう、お薬が処方された際は以下の項目を医師や薬剤師に確認しておくことをおすすめいたします。
- 塗る順番:保湿剤と治療薬のどちらを先に塗るか
- それぞれの量と広さ:からだ全体に塗るものと、湿疹があるところだけに塗るもののちがい
- 1日の回数と期間:朝晩2回か1日1回か、何日続けて、いつまた受診するか
これらを確認したら、人型の簡単なイラストやスマートフォンのメモに「膝裏:薬を1FTU、その周りに保湿剤」のように書き留めて洗面所に貼っておくと、ご夫婦でのすれ違いが減ります。また、保育園や幼稚園で日中の保湿や外用薬の塗布をお願いする場合は、園の指定書式に沿って「塗る部位・タイミング・1回量」を具体的に共有できるよう、診察時に相談しておくとスムーズです。
夜にかゆくて目が覚める・掻き壊しが続くときは保湿を増やすより受診を
ご家庭でのケアと受診を切り分ける際は、現在の肌の表面がどの状態にあるかを観察します。カサつきや粉ふきといった「乾燥のみ」であれば、まずは保湿剤の量や塗り方を見直して経過を見ることが可能です。しかし、赤みやブツブツ、かゆみがある場合は炎症が起きているサインであり、治療薬による対応が検討されます4。さらに、掻き壊してジュクジュクした浸出液が出ている、出血している、黄色いかさぶたや痛みがあるといった場合は、細菌などの感染症が重なっている可能性も考えられるため、早めの受診が推奨されます。
とくに、夜間にかゆみで目を覚ましてしまう、保育園でも掻きむしりが続いている、保湿剤を塗るとしみる・かえって赤みが強まるといった様子が見られることがあります。このようなときは、保湿の回数を増やして様子を見るよりも小児科へご相談ください。なお、外用薬だけではコントロールが難しい中等症以上のケースでは、年齢や症状に応じて治療の選択肢も検討されます5。
受診するときに伝えたいことと持っていくもの
診察を受ける際は、いつからどの部位にかゆみがあるか、ご家庭でどの保湿剤をどれくらいの量塗っているかが伝わると、具体的な方針を一緒に考えやすくなります。
受診時には、普段ご自宅で使っている保湿剤や処方薬(またはお薬手帳)、夜間や入浴後に赤みが出ているときの様子を撮影したスマートフォンの写真などを持参すると、診察時の手がかりになります。
なお、お子様の皮膚の病気のふつうの診察やお薬の処方は、健康保険が使えます。ドラッグストアなどで買う市販品は保険が使えず、費用はすべてご家庭の負担になります。おうちでのケアに迷ったときや、ご家族で治療の進め方をそろえたいときは、どうぞお気軽にご相談ください。
ポイント
保湿剤は乾燥を防ぐ土台であり、赤みや夜間のかゆみ・掻き壊しがあるときは炎症を抑える治療薬が必要になるため、保湿だけで様子を見ずに小児科へご相談ください。
よくあるご質問
Q1. アトピー性皮膚炎の保湿はどうやってすればいいですか?
A. ぬるめのお湯とよく泡立てた石けんでやさしく洗い、お風呂のあとはタオルで押さえるように水けをふいて、肌がかわく前に保湿剤を塗るのが基本です。お湯は季節に合わせて、熱すぎないぬるめにします。大人の人差し指の先から第一関節までの量(1FTU=大人の手のひら2枚分)を目安に、すり込まず手のひらでやさしく広げ、朝とお風呂のあとの1日2回を目安に続けます。
Q2. 子供のアトピーにおすすめの保湿剤は何ですか?
A. 特定の製品がすべてのお子様に合うわけではなく、季節や部位、肌の乾燥具合によって軟膏、クリーム、ローションを使い分けることが勧められています。カサつきが強い時期は被覆力のある軟膏やクリーム、汗をかく季節や広範囲には塗り広げやすいローションが選ばれることが多いため、お子様の肌の状態に合わせて医師へご相談ください。
Q3. アトピーにワセリンは効果がありますか?
A. ワセリンは皮膚の表面に油分の膜を作って水分が逃げるのを防ぎ、刺激が少ないため保湿ケアの補助として使われます。ただし、水分そのものを補う働きや、すでに起きている湿疹の炎症・かゆみを直接おさえる作用はありません。赤みやかゆみがあるときは、治療薬といっしょに使うかを医師に確認することが大切です。
Q4. 保湿剤とステロイドなどの治療薬は、どちらを先に塗ればよいですか?
A. 広いところに塗る保湿剤を先に塗り、その上から湿疹があるところだけに治療薬を重ねて塗る方法がよく案内されます。ただし、薬の種類や混ぜてある成分、肌の状態によって塗る順番の指示がちがうこともあります。処方のときに、医師や薬剤師へくわしい手順を確かめてください。
参考文献
1. 第39回日本小児臨床アレルギー学会共催 市民公開講座「知りたいこどものアレルギー」レポート⑤(全10回)|WEB版すこやかライフ|独立行政法人環境再生保全機構. https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/sukoyaka/column/202310_1/
2. Sidbury R, Alikhan A, Bercovitch L et al. Guidelines of care for the management of atopic dermatitis in adults with topical therapies. Journal of the American Academy of Dermatology. 2023. PMID: 36641009 / DOI: 10.1016/j.jaad.2022.12.029
3. アトピー性皮膚炎 Q8 – 皮膚科Q&A(公益社団法人日本皮膚科学会). https://qa.dermatol.or.jp/qa1/q08.html
4. 第39回日本小児臨床アレルギー学会共催 市民公開講座「知りたいこどものアレルギー」レポート⑥(全10回)|WEB版すこやかライフ|独立行政法人環境再生保全機構. https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/sukoyaka/column/202310_2/
5. Edwards SJ, Karner C, Jhita T et al. Abrocitinib, tralokinumab and upadacitinib for treating moderate-to-severe atopic dermatitis. Health technology assessment (Winchester, England). 2024. PMID: 38343072 / DOI: 10.3310/LEXB9006
1998~2002年 筑波大学附属病院小児科、きぬ医師会病院小児科、茨城県立こども病院新生児科、牛久愛和総合病院小児科
2002~2007年 筑波メディカルセンター病院 小児科
2008~2014年 筑波メディカルセンター病院 小児科医長
2014~2015年 茨城西南医療センター病院 小児科科長
2015年10月 つくばキッズクリニック開設
日本内分泌学会認定 内分泌代謝科(小児科)専門医
日本成長科学協会地区 委員
日本小児科医会 地域総合小児医療 認定医
日本小児救急医学会
日本小児アレルギー学会
日本小児内分泌学会
日本糖尿病学会
日本夜尿症・尿失禁学会
