
口を痛がって飲まないとき、まず見ておきたいこと
園から手足口病とヘルパンギーナの流行のお知らせが届いた翌朝、お子様が熱を出し、口を痛がって麦茶も飲もうとしない。手足に発疹は見当たらず、どちらなのか判断がつかない。こうしたご相談をよく伺います。
今夜の過ごし方を決める手がかりは、病名よりも飲めた量、最後に尿が出た時刻、呼びかけへの反応です。この記事では、症状が出やすい場所と経過の違いを整理します。そのうえで、水分の勧め方、相談を考えたい様子、登園前に園へ確認しておきたいことをお伝えします。
この記事の要点まとめ
- 手足口病は手足などにも発疹が出る傾向があり、ヘルパンギーナはのどの奥に症状が現れやすい。
- 発疹だけで判断せず、飲めた量や尿、呼びかけへの反応を見守り、少量ずつ水分を勧める。
- 水分が取れず尿が減る場合は小児科へ相談し、登園は体調と園の決まりを確認する。
目次
手足口病とヘルパンギーナ、症状はどこに現れやすい?
どちらの病気でも、口の中に水ぶくれや口内炎のようなただれができます。違いが出やすいのは「口以外にも症状が出るか」と「熱の出方」の2点です。原因はいずれもコクサッキーウイルスなどのエンテロウイルス(腸の中で増えるウイルスの仲間)です。同じ種類のウイルスが、どちらの病気を起こすこともあります。
| 手足口病 | ヘルパンギーナ | |
|---|---|---|
| 口の中 | 舌、頬の内側、歯ぐきなどに水疱・ただれ | のどの奥(上あごの奥)に集まりやすい |
| 口以外 | 手のひら・足の裏・おしり・ひざなどに発疹 | 目立たないことが多い |
| 熱 | 出ないことや微熱程度のことも | 急に高い熱が出ることが多い |
この表は、あくまで傾向を示したものです。手足口病でも、発疹が口の症状より遅れて出てくることがあります。さらに、コクサッキーウイルスA6型では、典型例とは異なる広い範囲の発疹も知られています。
多くは数日のうちに自然に落ち着く経過をたどるとされます。ただし、まれに髄膜炎や脳炎などの合併症も報告されています。そのため、症状が落ち着くまでの数日は様子の変化を見守ることが大切です。
ポイント
発疹がまだ出ていない時期もあるため、見た目だけで病名を決めることはできません。病名の見分けより、飲めているかを優先して見てください。
口の中と手足・おしりを、無理のない範囲で観察する
口を嫌がるお子様の口を無理に開けると、泣いてかえって飲まなくなることがあります。あくびをしたときや泣いたとき、歯みがきのついでに見えたら確かめる、くらいで十分です。
- 見えた場所(舌、のどの奥など)と、白っぽいぶつぶつや赤いただれの有無
- 手のひら・足の裏・おしり・ひざの発疹の有無と、気づいた時刻
- よだれが増えた、食べ物を口に入れると泣く、などの様子
気づいたことはスマートフォンで写真に残しておくと、診察のときに経過を伝えやすくなります。発疹がないことだけで「どちらでもない」と判断しないようにしてください。
今夜は飲めるか、尿が出ているかを中心に見守る
今夜いちばん大切にしたいのは、病名の見極めより「水分が取れているか」「尿が出ているか」の2点です。どちらの病気にも、ウイルスそのものを抑える特効薬はありません。水分補給や、熱・痛みへのケアなど、症状に合わせた対応が中心になります。
食事が一時的に減っても、水分が取れていれば体は持ちこたえやすくなります。「ごはんを食べさせなきゃ」と焦るより、少量の水分を繰り返し勧めることを優先しましょう。痛みで眠れない、熱でつらそうといったときの解熱鎮痛薬は、医師から処方されたものを指示どおりに使ってください。
見守る間は、飲めた時刻とおおよその量、おむつが濡れた時刻をメモしておきます。いつもの間隔を大きく超えておむつが濡れない、おむつが普段よりずっと軽い、といった変化は、体の水分が足りなくなっているサインのひとつです。泣いても涙が少ない、唇が乾いているといった様子も合わせて見ておきましょう。
ポイント
飲めない状態が続き、尿も減っているときは、医療機関への相談を考えてください。
口が痛む子に水分を勧めるときの工夫
口の傷にしみにくいものを、スプーンやストローで少しずつ勧めるのが基本です。
- 冷やした麦茶や湯冷まし、経口補水液など、刺激の少ない飲み物を選ぶ
- 酸味の強い果汁、炭酸、塩気の強いものはしみやすいので控えめに
- 一度にたくさん飲ませようとせず、数分おきにひと口ずつ勧める
ゼリーやプリン、冷ましたスープなど、のどごしのよいもので水分を補う方法もあります。嫌がるときに無理に口へ入れると、飲むこと自体を怖がるようになることがあります。少し時間を置いてから、また勧めてみるくらいの気持ちで大丈夫です。勧めながら、尿の出方や呼びかけへの反応にも目を配っておきましょう。
小児科に相談するとき、伝えてほしい様子
水分をほとんど取れない、尿が少ない、ぐったりしている、呼びかけへの反応がいつもと違う。こうした様子があれば、手足口病かヘルパンギーナかがはっきりしなくても、小児科へご相談ください。何度も吐く、強い頭痛を訴える、手足がぴくつくといった様子は、まれな合併症の手がかりになることがあります。呼吸が苦しそう、けいれんがある、意識がはっきりしないときは、夜間であっても速やかに医療機関へ連絡してください。
当院への相談に限らず、ご家族がお子様を見守るなかで気づいたわずかな変化は、診療の大切な手がかりになります。受診時には、口の痛みで飲み物を嫌がる様子や、いつもより眠っている時間が長いといった変化もお伝えください。体調がすぐれずぐずりやすいお子様も、普段との違いを言葉にしておくと役立ちます。
連絡前に、飲水・尿・発熱の経過を整理する
電話やWEB問診の前に、伝えたいことを手元のメモにまとめておくと、短い時間でも状況が伝わりやすくなります。まとめておきたいのは、いつから熱が出て何度まで上がったか、最後に飲めた時刻とおおよその量、最後に尿が出た時刻、普段と比べて何が違うか、の4つです。
あわせて、園で流行している病気の名前や、きょうだいの体調も添えていただければと思います。口の中や発疹の写真があれば、診察の際にお見せください。経過を順に追えると、医師が判断する際の大きな助けになります。
熱が下がった後の登園は、体調と園の決まりを確認
登園は、熱が下がったことだけで決めないようにしましょう。普段に近い食事や水分が取れ、園で一日を過ごせそうかどうかを目安に考えてください。口の痛みが残って昼食や水分が進まないうちは、集団生活の負担が大きくなります。
登園再開の扱いや必要な書類は、園ごとに異なります。欠席を連絡する際に「再開の目安」と「提出書類の有無」を確認しておくと、仕事の段取りも立てやすくなります。当院で診断した感染症についても、登園許可証の要否は園の決まりによります。必要な場合は、園に書類の様式を確認してください。
症状が落ち着いた後も、しばらくは便などにウイルスが含まれることがあるとされています。おむつ替えやトイレの後、食事の前の手洗いを家族みんなで続け、タオルの共用は控えましょう。
熱が下がっても飲めない日が続く、口の痛みや発疹が長引くといった場合は、登園を考える前に一度ご相談ください。そのときの様子を伺いながら、一緒に次の一歩を考えてまいります。
1998~2002年 筑波大学附属病院小児科、きぬ医師会病院小児科、茨城県立こども病院新生児科、牛久愛和総合病院小児科
2002~2007年 筑波メディカルセンター病院 小児科
2008~2014年 筑波メディカルセンター病院 小児科医長
2014~2015年 茨城西南医療センター病院 小児科科長
2015年10月 つくばキッズクリニック開設
日本内分泌学会認定 内分泌代謝科(小児科)専門医
日本成長科学協会地区 委員
日本小児科医会 地域総合小児医療 認定医
日本小児救急医学会
日本小児アレルギー学会
日本小児内分泌学会
日本糖尿病学会
日本夜尿症・尿失禁学会
